新築を建てた際に、ハウスメーカーの施工ミスが発覚することがあります。
施工ミスには、機能や安全性に問題があるものから、見た目や使い勝手に問題があるものまでさまざまです。
施工ミスによって、オーナーが被った精神的・身体的苦痛や、経済的損失を「迷惑料」として請求できる場合があります。
ここでいう迷惑料とは「感情を傷つけられた」など気分を害されたという精神的被害に対する金銭のやり取りはさしていません。
実際ハウスメーカーでは、精神的被害を与えたという金銭のやり取りはされていないからです。
代わりにと言っては何ですが、ハウスメーカーは施工ミスに対して、補修、お詫びとしてのサービスでのオプション追加工事、減額などがされています。
この記事では、上記のように損害賠償に近い意味で「迷惑料」という表現を使用していますのであらかじめ、ご了承ください。
さて、一般的には、新築で迷惑料を請求できる施工ミスの範囲は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第94条により、構造耐力や雨水の侵入に影響がある瑕疵(かし)の場合です。
この場合、施工業者は引き渡しから10年間、瑕疵担保責任を負います。
しかし、施工ミスは構造耐力や雨水の侵入に影響があるという大きなものだけではありません。
そこで、まず小さなものを含めて迷惑料を請求できる施工ミスの範囲を確認しましょう。
迷惑料を請求できる施工ミスの範囲は、以下のとおりです。
機能や安全性に問題がある施工ミスの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
・基礎や柱、梁などの構造部に欠陥があり、地震や台風などの災害に耐えられない
・窓やドアがきちんと閉まらず、防犯性が低い
・エレベーターや階段などの設備が故障しやすく、安全に使用できない
これらの施工ミスにより、住まいの機能や安全性が損なわれ、住民に迷惑や損害が発生した場合、施工業者に対して迷惑料の請求が可能です。
具体的な金額については、裁判所の判断によりますが、損害の程度や精神的苦痛の程度などを考慮して、数万円から数百万円程度の請求が認められるケースもあります。
なお、施工ミスが発覚した場合は、すぐに施工業者に連絡し、修理や補修を依頼しましょう。
また、修理や補修の内容や費用については、必ず書面で残しておくことが大切です。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
・屋根や外壁、サッシなどの防水処理が不十分で、雨漏りやカビが発生する
・給排水管や配管の接続が不十分で、漏水が発生する
・基礎や土台の施工が不十分で、傾きが発生する
これらの施工ミスにより、住まいに雨水が侵入し、家具や家電が故障したり、壁や天井にカビが発生したりするなどの被害が発生する可能性があります。
また、雨漏りや傾きにより、住まいの安全性が損なわれる可能性もあります。
このような施工ミスにより、損害が発生した場合、施工業者に対して迷惑料の請求が可能です。
断熱性や気密性不足などの施工ミスの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
・断熱材の施工が不十分で、部屋間で温度にムラが出る。
・気密性不足で、換気がうまくいかず、空気が淀みやすい。
・設置した断熱材が湿気を含んでいるなど状態が悪く、カビやダニが発生しやすくなっている。
・断熱材が設置できていない箇所があり、熱が逃げて光熱費が高くなる。
これらの施工ミスによって、住まいの快適性や資産価値が損なわれた場合には、迷惑料の請求が可能です。
耐震性や耐火性不足に該当する施工ミスの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
・基礎の欠損などでの強度不足
・柱や梁の粗悪材による強度不足
・接合部の強度不足
・耐震等級が基準値に満たない
・壁や天井の防火性能不足
・ドアや窓の防火性能不足
・電気設備の防火性能不足
これらの施工ミスによって、住宅の耐震性や耐火性が不足すると、地震や火災などの災害時に被害が拡大する可能性があります。
そのため、これらの施工ミスがあった場合は、迷惑料の請求が認められる可能性が高くなります。
なお、品確法の瑕疵担保責任は、施工業者の故意や過失がなくても発生します。
そのため、施工業者が施工ミスを認めない場合でも、迷惑料の請求をすることは可能です。
見た目や使い勝手に影響がある瑕疵(かし)があった場合、施工業者は引き渡しから5年間の瑕疵担保責任を負うと定めています。
・壁や天井の歪み、段差
・床の歪み、段差、浮き上がり
・漆喰やクロスの剥がれ、ひび割れ
・建具、フローリングの反り、割れ
・ドアや窓が開閉できない、または開閉しにくい
・ドアや窓がきちんと閉まらず、隙間がある
・ドアや窓のガラスが割れている、またはひび割れている
・ドアや窓の水密性、気密性が低く、雨漏りが発生する
・収納の奥行きや高さが設計図面と異なる
・収納の扉や引き出しが重くて開閉しにくい
・キッチンの蛇口から水漏れする
・トイレの便座が壊れている
・エアコンが冷暖房を正常にしない
ただし、施工ミスの程度が軽微であったり、オーナーの過失が認められたりする場合には、迷惑料の請求が認められないこともあります。
これらの施工ミスによって、住宅の見た目や使い勝手が悪くなると、生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
そのため、これらの施工ミスがあり、快適性に支障が出る場合は、迷惑料の請求が認められる可能性が高くなります。
壁や床の不陸とは、壁が垂直でないことや床が水平でないことです。
ようするに曲がっている状態で、このような壁や床の不陸があると、見た目にも不格好ですし、家具を置いたり、掃除をしたりするのが大変になります。
また、壁や床の不陸が大きい場合には、構造耐力に影響を与える可能性もあります。
ひび割れで多いのは、特に壁や床、天井などにできる亀裂が挙げられます。
ひび割れがあると、これも見た目にも不格好なうえに、雨水や湿気が入り込む原因にもなります。
また、ひび割れが大きくなり、壁体内の断熱材に湿気などの影響が及ぶと、断熱性などにも影響を与える可能性があります。
迷惑料を請求する際には、以下の手順で行います。
・施工ミスをハウスメーカーに通知する
・ハウスメーカーと協議し、迷惑料の請求をする
・協議がまとまらない場合は、民事調停や訴訟を起こす
施工ミスを通知する際には、以下の点を明確にしておきましょう。
・施工ミスの内容
・施工ミスによって生じた損害
・請求する迷惑料の金額
ハウスメーカーと協議する際には、以下の点に注意しましょう。
・冷静に話し合い、感情的にならないようにする
・事実に基づいて主張する
・妥協できる範囲を決めておく
協議がまとまらない場合は、民事調停や訴訟を起こすことになります。
民事調停は、裁判所の調停官を仲介役として、当事者同士で話し合いを進める方法です。
訴訟は、裁判所の判断によって、迷惑料の請求が認められるかどうかが決まります。
通常は、ハウスメーカーは施工ミスに対して、補修、無償でのオプション追加工事、減額で対応されていますが、調停や裁判になってしまった時は、損害賠償として金銭での支払いになります。
迷惑料の金額は、施工ミスの内容や程度、オーナーの被った損害などによって異なります。
一般的な目安としては、施工ミスによって生じた損害の10~30%程度が請求できると考えられます。
ただし、具体的な金額は、専門家に相談して決めるのがよいでしょう。
施工ミスを起こされた場合、まずは冷静に状況を把握し、適切な対応をすることが大切です。
迷惑料を請求する際には、証拠をしっかりと収集しておきましょう。
施工ミスの写真や動画、図面などを用意しておくと、請求が認められやすくなります。
また、大きな損害を受けた場合の請求は、法律的な知識が必要となる場合があります。
専門家に相談しながら、適切な対応を進めましょう。
・施工ミスを早期に発見し、すぐにハウスメーカーに通知する
・施工ミスの内容や程度を、客観的な証拠をもって立証する
・迷惑料の請求額を、施工ミスによって生じた損害や、オーナーの被った精神的・身体的苦痛を踏まえて、合理的に算定する
・交渉は、冷静に、事実に基づいて行う
・協議がまとまらない場合は、早めに専門家に相談する
新築で施工ミスが発生した場合は、落ち着いて適切な対応をとりましょう。