新築の住宅を購入する際、住宅ローンを組むのが一般的ですが、現金一括で家を買う人もいます。
家をキャッシュで買う人の割合は全体の8.7%で、贈与や相続も含めると約20%になります。
現金一括で家を買うことにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
また、現金一括で家を買う場合に注意すべき点は何でしょうか?
この記事では、家をキャッシュで買う人の割合や、現金一括で家を買うことのメリット・デメリット、注意点について解説します。
家をキャッシュで買うことのメリットは、主に以下の3つです。
住宅ローンを組む場合、借入金額に加えて金利や手数料などの費用が発生します。
これらの費用は、借入期間や金利の高さによって変わりますが、長期間にわたって支払うとなると、かなりの額になります。
例えば、3000万円の住宅ローンを35年間で返済する場合、金利が1%だと総返済額は約3700万円、金利が2%だと約4500万円になります。
一方、現金一括で家を買う場合は、金利や手数料などの費用がかからないため、総返済額が安くなります。
金利が高い時代には、現金一括で家を買うことは有効な選択肢でした。
住宅ローンを組む場合、借入条件や返済能力に応じて、金融機関から審査を受ける必要があります。
審査には、収入や勤務先、勤続年数、年齢、他の借入状況などが影響します。
審査に通らなければ、住宅ローンを組むことができません。
また、審査に通ったとしても、希望する金額や条件で借りることができるとは限りません。
さらに、住宅ローンを組むには、契約や抵当権の設定などの手続きが必要で、時間や手間がかかります。
一方、現金一括で家を買う場合は、住宅ローンの審査や手続きが不要なため、スムーズに購入することができます。
住宅ローンを組む場合、家は金融機関に抵当権が設定されるため、自分の資産としての価値は低くなります。
抵当権が設定されている家は、売却や贈与などの際に、金融機関の同意が必要になります。
また、住宅ローンの返済が滞ったり、破産したりすると、家は差し押さえられる可能性があります。
一方、現金一括で家を買う場合は、家は自分の資産としての価値が高まります。
抵当権が設定されていない家は、自由に売却や贈与などをすることができます。
また、家の価値が上昇した場合、資産としての利益を得ることができます。
家をキャッシュで買うことのデメリットは、主に以下の4つです。
住宅ローンを組んで家を買う場合、住宅ローン控除という制度を利用することができます。
住宅ローン控除とは、住宅ローンの利子分を所得税や住民税から控除できる制度です。
住宅ローン控除の対象となる住宅ローンの利子は、年間最大100万円までです。
住宅ローン控除の期間は、借入日から10年間です。
住宅ローン控除を利用すると、節税効果があります。
例えば、年収500万円の人が、3000万円の住宅ローンを35年間で返済する場合、金利が1%だと約100万円、金利が2%だと約200万円の節税効果があります。
一方、現金一括で家を買う場合は、住宅ローン控除が利用できないため、節税効果がありません。
現金一括で家を買う場合、大きな額の現金を一度に支払う必要があります。
そのため、貯金が減ることになります。
貯金が減るということは、将来の不測の事態に対応できなくなる可能性があります。
例えば、自分や家族の病気や怪我、失業や減収、災害や事故などの場合、貯金があれば対処できますが、貯金がなければ困難になります。
また、貯金が減るということは、他の投資や消費に回せるお金が減ることにもなります。
例えば、株や不動産などの有望な投資機会があった場合、貯金があれば参加できますが、貯金がなければ見送ることになります。
同様に、旅行や趣味などの楽しみに使えるお金も減ります。
住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入することができます。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの借入者が死亡や高度障害になった場合、住宅ローンの残債を一括で返済してくれる保険です。
団体信用生命保険に加入すると、万が一の場合に家族に住宅ローンの負担を残さないことができます。
また、団体信用生命保険は、個人で加入する生命保険よりも保険料が安いというメリットがあります。
一方、現金一括で家を買う場合は、団体信用生命保険に加入することができません。
現金一括で家を買う場合は、個人で生命保険に加入する必要がありますが、その場合は保険料が高くなる可能性があります。
現金一括で家を買う場合、住宅ローンを組む場合と比べて、税金に関して注意すべき点があります。
現金一括で家を買った場合に発生する税金は、主に以下の3つです。
現金一括で家を買う場合、親から子への贈与とみなされる場合があります。
親から子への贈与とみなされる場合は、贈与税が発生します。
贈与税は、贈与された金額に応じて、10%から55%の税率で課税されます。
ただし、親から子への贈与には、一定の非課税枠があります。
非課税枠は、親から子への贈与に限らず、一生涯に受け取ることができる贈与の総額に適用されます。
非課税枠は、2024年現在、1100万円に加えて、300万円×親族の数です。
例えば、親から子への贈与が2000万円で、子が独身であれば、非課税枠は1400万円になります。
その場合、贈与税が発生するのは、2000万円から1400万円を引いた600万円に対してです。
贈与税の税率は、600万円に対して10%なので、贈与税は60万円になります。
現金一括で家を買う場合、所得税が発生する場合があります。
所得税が発生するのは、現金一括で家を買うために、自分の資産を売却した場合です。
自分の資産を売却した場合、売却益が発生する可能性があります。
売却益とは、売却価格から取得価格を引いた額です。
売却益が発生した場合、その売却益に対して所得税が課税されます。
所得税の税率は、売却した資産の種類や売却益の額によって異なりますが、一般的には15%から55%の範囲です。
例えば、株式を売却して現金一括で家を買う場合、株式の売却益に対しては、20.315%の税率で所得税が課税されます。
株式の売却益が1000万円であれば、所得税は203万1500円になります。
現金一括で家を買う場合でも、住宅ローンを組む場合と同様に、不動産取得税が発生します。
不動産取得税とは、不動産を取得した場合に課税される税金です。
不動産取得税は、不動産の評価額に応じて、1%から4%の税率で課税されます。
不動産の評価額とは、不動産の市場価格ではなく、固定資産税の評価額のことです。
固定資産税の評価額は、市場価格の6割程度になることが多いです。
例えば、市場価格が3000万円の不動産を取得した場合、不動産の評価額は約1800万円になります。
その場合、不動産取得税は、1800万円に対して3%の税率で課税されるので、54万円になります。
家をキャッシュで買う人の割合は、全体の8.7%です。
これは、2019年に行われた国土交通省の住宅・土地統計調査によるところです。
この調査では、住宅の取得方法について、以下のように分類されています。
現金一括:8.7%
住宅ローン:75.5%
贈与:5.8%
相続:7.4%
その他:2.6%
現金一括で家を買う人の割合は、贈与や相続も含めると約20%になります。
これは、2020年に行われた日本政策金融公庫の住宅購入者アンケートによるところです。
このアンケートでは、住宅の購入方法について、以下のように分類されています。
現金一括:19.9%
住宅ローン:80.1%
現金一括で家を買う人の割合は、年代や地域によっても異なります。
一般的には、年齢が高いほど、現金一括で家を買う人の割合が高くなります。
また、都市部よりも地方部のほうが、現金一括で家を買う人の割合が高くなります。
これは、年齢が高いほど、貯金や資産が多くなる傾向があることや、地方部のほうが、住宅の価格が安くなる傾向があることが理由として考えられます。
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この記事では、家をキャッシュで買う人の割合や、現金一括で家を買うことのメリット・デメリット、注意点について解説しました。
現金一括で家を買うことには、総返済額が安くなる、住宅ローンの審査や手続きが不要になる、資産としての家の価値が高まるというメリットがあります。
しかし、住宅ローン控除が利用できない、貯金が減る、団体信用生命保険に加入できないし、現金一括で家を買った場合の税金に注意するというデメリットもあります。
また、現金一括で家を買う人の割合は、全体の8.7%で、贈与や相続も含めると約20%になります。
そして、現金一括で家を買う人の割合は、年代や地域によっても異なります。
現金一括で家を買うかどうかは、自分の資産状況や投資戦略、経済状況などを総合的に判断する必要があります。
現金一括で家を買うことのメリット・デメリットや注意点を理解しておくことが大切です。